東レは、半導体分野などで利用される超純水製造に向けて、下廃水再生水を原水とした場合に求められる尿素の除去性能を2倍に高めた中性分子高除去・低圧逆浸透(RO)膜エレメント“TBW-XHRシリーズ”を11月から国内水処理エンジニアリング会社向けに先行販売する。
世界各地で水不足が深刻化するなか、半導体メーカー各社は大量の超純水を使用する半導体製造工程において、工場内廃水の再利用率を高める取り組みに加え、半導体製造に用いる超純水の水源として、現状の水道水に代わる下廃水再生水の活用や海水の利用拡大を検討している。これら多様な原水から超純水を製造するには、水中に含まれる塩分だけでなく、シリカやホウ素、尿素、アルコールなどを除去する技術が必要。とくに尿素は、飲料用途で問題となるだけでなく、超純水中に含まれる場合、半導体製造の露光工程でトラブルを起こすため、尿素を高効率で除去することが重要な課題となっていた。
従来の下廃水再生水は、水道水に対して尿素濃度が3倍の1?当たり約30μgと高く、超純水製造プロセスでは、尿素を極限まで除去することが求められる。しかし、尿素はサイズが小さく、電気的に中性の分子であるため、海水に含まれるホウ素と同様に除去の難度が高く、高い造水量を維持しながら尿素やホウ素の除去率を向上させることがRO膜開発の課題となっていた。
東レはRO膜の製造プロセスの革新により、水を選択的に透過させ、尿素やホウ素を始め、アルコールなどの除去性を高める、新たな膜構造の制御技術を開発し、従来は除去が難しかった尿素の除去性を従来比2倍に向上した“TBW─XHRシリーズ”の開発に成功した。
なお、本製品に関わる技術について同社は、12月8日から12日にかけてアラブ首長国連邦のアブダビで開催される世界最大級の水処理学会「IDRA(International Desalination and Reuse Association)」の年次大会にて発表する予定。