東洋紡エムシーの三次元網状繊維構造体“ブレスエアー”を用いたマットレスが、神戸市立王子動物園のオスのエゾヒグマ「ロクジ」の褥瘡予防に活用され、治療に貢献したことがわかった。ブレスエアーは過去にも、横浜市立金沢動物園において自力で立てなくなったオオカンガルーやヒツジに使われ、褥瘡を抑えることに成功。こうした事例をもとに、王子動物園が昨年7月21日よりブレスエアー製マットレスの使用を開始。300kg近いロクジの体重を支えるため、通常のブレスエアーよりも厚く(厚さ8cm)、素材も硬めのタイプを選び使用した。その結果、飼育員や獣医師の懸命な治療のおかげもあり、マットレスを使用してから褥瘡はみるみる回復。ロクジは2022年4月頃から足もとがよろつき始め、下半身が麻痺、徐々に歩行が困難となり、寝て過ごすことが多くなり、足の付け根など骨が出っ張った箇所に直径約10cmの褥瘡(床ずれ)ができるようになり、ひどい時は骨が見えるような状態だったという。患部に外用薬を塗ったり、ゴムマットや藁を敷いたりしてロクジの負担軽減を試みたが、改善は見られず、治療に専念するため23年7月8日に観覧を中止していた。しかし、ブレスエアーを開始後、4ヵ所あった褥瘡のうち3ヵ所の傷がふさがり、昨年10月には観覧を再開するに至ったという。ロクジは、使用初日からマットレスに対して警戒する様子を見せずに使用。現在も昼間は展示室にあるマットレス上で過ごすことが多く、とても気に入っている様子だという。
ブレスエアーは、高齢者介護施設のほかペット用の介護マットにも採用されているが、エゾヒグマという大型動物のQOL(Quality of life)向上にも役立つことがわかったことから、東洋紡エムシーは動物たちが少しでも快適で、より良い生活を送れるように、高機能素材の開発・提供に努めて行きたいとしている。