東レは、工場廃水の再利用や下水処理などの厳しい使用条件下において、高い除去性を維持したまま長期間安定して良質な水を製造できる高耐久逆浸透(RO)膜を開発した。膜洗浄時の薬品に対する耐久性を従来比2倍に向上したことで、膜の劣化による性能の低下が抑えられ運転管理が容易となり、交換頻度の半減やカーボンフットプリントの改善が期待できる。現在、量産準備を進めているところで2024年上期には、市場が急速に拡大している中国での発売を目指し、日本を含むその他の国・地域向けとして製品開発に活用していく計画。
東レリサーチセンターが保有する、原子配列を直接観察することが可能な最先端の構造解析技術(走査透過型電子顕微鏡:STEM)とDX(デジタルトランスフォーメーション)によるデータ解析技術を融合することで、RO膜の分離機能層を構成する架橋芳香族ポリアミドの1ナノメートル(10億分の1メートル)以下の微小な孔構造を定量的に解。この解析に基づき、洗浄薬品に接触した際の孔構造の安定性に寄与する部分構造を見いだし、革新的な製造プロセスの改善により、ポリマー構造を新たに設計することによって、安定な孔構造を有するRO膜を創出した。
東レは、今回開発したRO膜を用いて過酷な薬品洗浄条件を模擬した廃水再利用プラントでの運転試験を行い、得られる水の品質悪化を50%抑制する効果を実証。高頻度の薬品洗浄が必要な下水処理場、化学・鉄鋼・染色工場などでの廃水再利用をはじめ、廃水の排出量を無くすZLD(ゼロリキッドディスチャージ)などへの活用において、RO膜の寿命を延長し、交換・廃棄にともなうCO2排出量を半減することが期待できるとし、量産体制を整えていく。