東レは、インド国タミル・ナドゥ州チェンナイ市において水処理膜を用いた下水再利用システム実証を開始する。チェンナイに完工した実証プラントにおいて、今年5月から約1年半の間に、2つの下水再利用システムの実証を行う。システムは、①生物処理+UF(限外ろ過)膜+RO(逆浸透)膜と、②MBR(膜分離活性汚泥法)膜+RO膜の2つ。UF膜、MBR膜によりろ過された水は下水中の有機物、濁質、微生物が除去され、それを湖などへ放流することで、間接的に飲料水として再利用が可能となる。RO膜は塩類、重金属、ヒ素、フッ素などを除去できるので、良質な再生水を得ることができる。東レは近年、RO膜、UF膜、MBR膜それぞれにおいて、省エネ型の新製品を開発・上市しており、これらの製品を適用することで、造水量当たりの電力消費量について従来製品比30%低減を目指している。インドの電気料金はこの10年間で約2倍に上昇していることから、省エネ効果の高い本システムはインド市場において高い訴求力を有すると考えている。
急速な都市化が進むインドではとくに大都市で水需要が急増。一方、同社の調べによるとインドでは全土の約50%が干ばつ被害により、水の供給能力が30~40%不足しており、高額なコストをかけて他地域から水を輸送している状況にある。下水のうち適切な処理が行われているのは約30%で、大部分は河川などへそのまま放流され水質汚染が問題となっており、工業用水や生活用水としての水の再利用はほとんど進んでいない。
こうした状況にあることから、東レは独立行政法人国際協力機構(JICA)の民間連携事業である「中小企業・SDGsビジネス支援事業~普及・実証・ビジネス化事業(SDGsビジネス支援型)~」に対して「インド国 水処理膜を用いた省エネ型下水再利用浄水システム普及・実証・ビジネス化事業」を提案し、2021年4月にこれが採択。また、インド工科大学マドラス校(Indian Institute of Technology Madras、以下「IITM」)の産学連携拠点である同校リサーチパーク(Indian Institute of Technology Madras Research Park)内に、22年8月にインド水処理研究拠点(Toray India Water Research Center、TIWRC)を新たに開設し、同大学と共同で水処理膜を用いた下水再利用研究に関する基礎検討を行いつつ、下水再利用システムの実証プラント建設を進め、このたび、実証プラントが稼働する運びとなった。