植物に直接散布することにより、その微細繊維が葉面を覆い、病原菌の侵入を物理的に防ぐ効果がある中越パルプ工業のセルロースナノファイバー(CNF)“ナノフォレスト─S【アグリ】”の普及を進めている中越パルプ工業と丸紅による取組みが、農林水産省の「みどりの食料システム戦略に基づく基盤確立実施事業計画」に認定された。両社は今回の認定を通じて今後、農業現場への普及拡大を見据えた実証試験を進め、化学農薬から物理的防除資材への転換を促すことにより、国内出荷額で730億円規模と見られている殺菌剤市場での販路開拓を目指していく。
ナノフォレスト─S【アグリ】は、中越パルプ工業が水中対向衝突法(ACC法)と呼ぶ製造法でつくるCNF“nanoforest(ナノフォレスト)”を用いて、植物向けの防除資材として開発した製品。さまざまな野菜や果実の栽培に使用することが可能。植物に散布すると本資材に含まれる微細繊維が葉面を覆い、病原菌の侵入を物理的に防ぐ「マスク効果」と、病原菌に葉面であることを認識させず葉内部への侵入を防ぐ「カモフラージュ効果」(CNFの両親媒性により葉面を親水化)を発揮し、葉内部への糸状菌や細菌の侵入をブロックすることができるので、化学農薬の使用低減に寄与する。みどりの食料システム戦略では、2050年までに化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減することを目標の1つに掲げていることから、本資材の普及拡大は目標達成の一助になるとみている。
世界人口の増加が予測されるなか、安定的で持続的な食糧生産を行うためには病虫害による損失は軽視できない状況にある。ただ、農薬などの化学的防除は耐性菌の出現や環境負荷が大きな問題となっていることから、化学的防除のみに頼/らない病虫害の防除がきわめて重要な課題となっている。中越パルプ工業と丸紅は、2018年より筑波大学を含めた3社で共同研究を開始し、葉面感染を原因とする病害に対してCNFが有益な効果を示すメカニズムを解明。両社は同技術の使用方法確立に向け、圃場試験や研究開発を重ね、同製品の実用化を進めていた。