東洋紡と三菱商事の共同出資により設立した、機能素材の企画・開発・製造および販売の新会社「東洋紡エムシー」が4月よりスタートした。4月6日には両社共同による記者会見が開かれ、新社の経営方針などを発表。それによると、新会社が掲げる経営ビジョンは「高機能素材で世界の課題を解決する」。フィルムや繊維などを除く東洋紡の売上高全体で約4分の1を占める機能素材分野を引き継ぐ新会社は、その技術力と三菱商事の幅広い産業知見やネットワークといった総合力を掛け合わせていくことで、国際市場におけるプレゼンス向上と多様化・複雑化する産業ニーズに対応したソリューションの提供を目指していく。
具体的には「環境ソリューション」と「モビリティ・電子材料」の2つを成長分野と位置付け、現状の売上高1,000億円から2025年度1,450億円、30年度2,500億円の達成を目指す。資本金は151億円、東洋紡が51%、三菱商事が49%を出資。代表取締役社長に東洋紡の代表取締役副社長執行役員である森重地加男氏が、また、代表取締役副社長に三菱商事執行役員の馬場重郎氏が就任した。
脱炭素化の進展や産業構造の変化、技術革新の加速など、機能素材を取り巻く事業環境が大きく変化するなか両社は、東洋紡がもつ製品・技術開発力と、三菱商事の幅広い産業知見・経営力など、業界の垣根を越えて両社が力を合わせることで持続可能な社会の実現と当該事業の成長を目指すことで2022年3月24日に合意。その後、約1年にわたり、経営方針や事業戦略に関する詳細な議論、東洋紡から新会社への事業分割、三菱商事から新会社に対する第三者割当増資を経て、今般正式に新会社のスタートとなった。
成長分野と位置づけたうちの1つである「環境ソリューション」分野では、リチウムイオン電池のセパレーター製造工程で排出されるVOC(揮発性有機化合物)などを高効率かつ高純度に回収できる環境ソリューション装置のほか、淡水化用途など水処理に貢献するアクア膜、世界最高レベルの強度を有する超高強度(スーパー)繊維など、環境負荷軽減に資する東洋紡の製品を、三菱商事がもつ顧客・パートナーとのコネクションを活用しながらグローバルに販売展開していく。
また、「モビリティ・電子材料」分野では、自動車の軽量化や電装化に求められる東洋紡の高機能樹脂(エンジニアリングプラスチック)や接着剤・塗料原料を、三菱商事が有する自動車OEMなどエンドユーザーとの接点や業界知見を活用しながら事業拡大を目指していく。