帝人フロンティアは、同社の繊維加工および不織布設計技術と、福井大学工学系部門工学領域繊維先端工学講座の藤田聡・教授による繊維材料におけるバイオ・医療分野での知見を合わせることで、スピーディーかつ大量に高品質な細胞培養を可能とする不織布マイクロキャリア“ecellba(イセルバ)”を開発した。今年7月より研究機関や大学、医薬品メーカーおよび化粧品メーカーなどに対するサンプル出荷を開始し、2024年以降国内外に幅広く展開していくことで26年度に1億円の売上を目指す。
細胞が接着しやすいだけでなく成長に必要な培地や酸素が循環しやすい構造をもつ、効率的な培養を可能とする足場材料。生体内で細胞が増殖する空間と物理的に似た構造をもつことから繊維に沿って細胞が伸長し、立体的で高品質な3D培養が可能となる。幅広い細胞種に適用が可能で、間葉系幹細胞の培養もできる。固定床や撹拌式のバイオリアクターを使用した培養方式に対応。とくに、バイオリアクター内に攪拌翼が無く、せん断力が緩やかな振盪培養との組み合わせが効果的であり、培地交換無しで一週間以内に十分量の細胞を回収することができる。また、不織布は多孔質なため表面積が大きく、他の足場材料よりも大量に細胞を培養することが可能。4日間の培養期間で従来のビーズタイプのマイクロキャリアと比較した場合、30%細胞数を増加させることができるという。
近年、再生医療やバイオ医薬品の実用化が進み、細胞培養の技術は再生医療の産業拡大に大きな役割を担っている。こうしたなか、一般的に細胞培養は培養ディッシュやフラスコを用いた平面培養が主に用いられているが、この方法では細胞の接着面積が小さく、数gの組織を培養するにも数百枚のディッシュが必要となるなど、作業に要する設備や人員および工数が大きくなることが問題となっている。このため、効率的で多量の細胞培養が可能な方法としてバイオリアクター方式が用いられているが、バイオリアクター方式の場合、細胞の接着・増殖・分化を制御するための足場が必要となり、その足場材には小片状のマイクロキャリアが注目されている。従来のマイクロキャリアは、ビーズタイプが一般的だが、細胞種・培養方式の多様化にともない、より大量、高品質な培養が可能となる新たなマイクロキャリア開発のニーズが高まっていた。こうしたなか帝人フロンティアは、福井大学・藤田教授の繊維材料におけるバイオ・医療分野に関する知見と自社の技術を合わせることで、より効率的な細胞培養が可能となる不織布マイクロキャリアを開発した。