東レは、チェコにあるグループ会社Toray Textiles Central Europe(TTCE)において車載用の不織布吸音材“Airlite(エアライト)”の生産設備を新たに導入し、欧州での自動車用極細吸音材事業を拡大する。生産能力約1,200t/年の設備を導入し、10月から量産を開始する。エアライトは、自動車の車体内で発生する走行騒音・共振音・外部流入音などを防止する極細吸音材。軽量のポリプロピレンとポリエステルを混入し、メルトブロー方式で生産した不織布吸音材である。幅広い周波数域で吸音性能に優れ、また従来の吸音材より軽いため、自動車走行時に発生するエネルギー消費量を減らすことができる。韓国拠点の東レ尖端素材(TAK)において年間約4,000tを生産しているが、今後欧州でとくに電気自動車(EV)用途の需要が拡大すると見込み、今回の新設を決定した。
先進国では欧州を中心に内燃自動車を含む自動車の社外騒音規制が段階的に強化されており、今後急速な普及が予想されるEVは、エンジン騒音がほとんどないため、運転者に対する路面騒音など外部からの走行騒音への対応が必要とされている。また、走行中の乗り心地や高級感演出のため車内騒音の低減が必要とされており、プロペラを用いたアーバン・エア・モビリティ(Urban Air Mobility:UAM)産業も今後成長が予測されていることから、軽量吸音材の需要はさらに拡大すると見て新設に踏み切った。
今回の新設によりTTCEは既存のエアバッグ基布事業に加え、本事業を通じて自動車素材分野における事業拡大を目指していく。また、TAKは車載用吸音材事業を欧州に広げ、欧州の電気自動車市場の拡大による自動車メーカーおよび主要部品会社との取り組みを強化していく。