東洋紡は、同社の総合研究所(滋賀県大津市)内にあるコーポレート研究所シミュレーションセンター(以下、「シミュレーションセンター」)がこのほど、科学研究費補助金取扱規程(昭和40年3月30日文部省告示第110号)第2条第4項に規定される、科学研究費助成事業(科研費)指定の研究機関として認められたと発表した。化学系の素材メーカーがシミュレーション分野における研究機関として指定を受けたのはこれが初めて。
同シミュレーションセンターは、東洋紡のコーポレート研究部門において、計算機シミュレーション技術の活用推進や専門人材の育成を担う組織。同社の計算機シミュレーション技術は、1960年代に世界で初めて開発した合成繊維の紡糸シミュレーションに端を発し、これまで医療、食糧、資源、エネルギーや環境などのさまざまな分野で活用されてきた。とりわけ、高分子やその複合材料を中心とした素材分野のシミュレーション技術に強みをもち、高機能素材とシミュレーション技術を組み合わせたソリューション提案を通じて、顧客の課題解決への貢献を目指している。「分析・シミュレーション技術」は、「高分子技術」「バイオ・メディカル技術」「環境技術」と並び、東洋紡が掲げる4つのコア技術の1つとなっている。
科学研究費助成事業(科研費)は、人文・社会科学から自然科学まですべての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」の助成を行う事業。このたびの指定を受け、「素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループ」を“めざす姿”として掲げる東洋紡は今後、大学や公的機関との産学官連携による共同研究やオープンイノベーションの推進をさらに強化し、シミュレーション基盤技術の一層の研鑽に注力するとともに、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)をはじめとする機械学習分野の技術とシミュレーションを融合させることでイノベーションの創出を図り、社会課題の解決に貢献できるよう努めていきたいとしている。