ニッケは、同社開発のゼラチン不織布“Genocel<ジェノセル>”が、名古屋市立大学大学院医学研究科脳神経科学研究所を中心とする研究グループによって行われたニューロンの移動に関する研究に貢献したと発表した。
研究グループはマウスを用いた実験により、傷害を受けた脳において、神経細胞からつくられたニューロンが傷害部位に向けて移動する際に、成長円錐という構造物が移動のアンテナ、司令塔としてはたらくことを発見。傷害部位に蓄積したコンドロイチン硫酸をはじめとする阻害物質を成長円錐が感知すると、移動が止まり、神経の再生が阻害されるが、へパラン硫酸を含有させたニッケの“Genocel<ジェノセル>”を移植すると、ニューロンの移動と神経機能の回復を促進し、障害された歩行機能の回復に成功した。
ニッケは「脳に内在する幹細胞を用いたニューロン再生方法を開発するうえで、生後につくられる新しいニューロンについての基礎的な理解は欠かせない。今回、これまで未解明であった、移動する未熟なニューロンの先端構造すなわち成長円錐の機能が明らかとなった。成長円錐の伸展を促進するジェノセルの移植によって、新生ニューロンの移動と機能回復を促進する技術は、新しい再生医療の基盤になることが期待される」とコメントしている。当研究成果は3月9日に英国の科学誌『ネイチャーコミュニケーションズ』に掲載されている。
ジェノセルは、独自の不織布構造のゼラチンを用いた、細胞培養用繊維基材。シートタイプと、ブロックタイプ、パウダータイプがある。不織布構造のため、すべての形状ともに空隙があり細胞が増殖しやすい。また、半透明なので培養下での観察が容易。基材の堅さ、厚みは細胞・実験用途に合わせてフレキシブルに変更が可能。ゼラチンの特性である栄養酸素透過性により3次元培養での内部の細胞も長期間生存させられる。濡れても強度があり、ピンセットで持ち上げても形状を維持できることからハンドリング性に優れ、細胞培養中も形状を維持できるといった特徴を兼ね備えている。3次元足場、細胞シートキャリア、異種細胞の積層などの用途に最適。