信州大学発のベンチャー企業であり、先端繊維素材の開発をリードするナフィアス(長野県上田市、代表:渡邊 圭)は、信州大学繊維学部との共同研究により、環境に優しい水系製造プロセスによって製造可能な「優れた熱及び化学安定性を有するPU/PEO複合ナノファイバー材料」の開発に成功。この研究成果をまとめた論文が、英国Royal Society of Chemistry発行の国際化学誌『Green Chemistry(グリーンケミストリー)』に掲載された。
この研究では、PUナノ粒子水分散体、水系カルボジイミド架橋剤、およびPEO(ポリエチレンオキシド)水溶液といった環境に優しい水系材料のみを用いてPU/PEO複合ナノファイバーを作製し、120℃で1分間熱を加えるだけで、優れた化学安定性、耐熱性、および親水性を実現できるPU/PEO複合ナノファイバー材料の開発と、その製造プロセスを確立した。今後、この製造方法で作製されたナノファイバー材料の詳しい特性と、どのような強化メカニズムで優れた物性が実現しているのかなど分析を行っていく。
エレクトロスピニング法で製造した超微細な繊維であるナノファイバー素材が注目されている。しかし、ナノファイバーはその特性からさまざまな産業での応用が考えられているものの、これまでの製造技術でつくられたナノファイバーは、汎用的な化学薬品に溶解してしまったり、120℃~130℃以上の高温に対して安定していなかったりと、いくつかの課題があった。具体的には、PU(ポリウレタン)ナノファイバーは、透湿防水膜やフィルタなどの産業分野で実用化されている高機能繊維材料であるが、化学安定性や熱安定性が課題となっているため用途が限定されていることから期待されているほどの市場拡大には至っていない。渡邊氏らは、今回の開発によりこれらの課題を克服することで用途拡大につながることを期待している。