花王は、水なしで頭皮や髪の汚れをふき取ることができる“宇宙きぶん スペースシャンプーシート”をこのほど上市した。花王が、宇宙飛行士が抱える宇宙での洗髪課題に向き合い開発し、2022年10月より若田宇宙飛行士が地上に帰還するまでの約半年間、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載され使用された突起型ドライシャンプーシート“3D Space Shampoo Sheet(スリーディースペースシャンプーシート)”を、同社発のオープンイノベーション・プラットフォーム組織「ファンテック Lab & Biz」が商品化したもの。
ISSで水はきわめて貴重な資源。このためISSには基本的にシャワーがなく、洗髪を行う際に使える水の量はごくわずかで、また、無重力環境下であることからシャンプー液が周囲に飛散しないよう注意しなければならず、さらに洗浄液に使用するアルコール類にもISS内への持ち込みには各種の制限があるなど、宇宙での洗髪にはいくつもの課題が存在している。そこで花王が長年培ってきた“清潔”を提供する技術を生かすことで、宇宙飛行士のQOL向上に貢献できないかと考えて開発したのが、スリーディースペースシャンプーシート。2021年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の取組みとして行われた「宇宙生活/地上生活に共通する課題テーマ・解決策のアイデア募集」に応募し、これが採用。22年10月より若田宇宙飛行士が地上に帰還するまでの約半年間、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載され使用された。今回上市した宇宙きぶん スペースシャンプーシートは、これを花王発のオープンイノベーション・プラットフォーム組織である「ファンテック Lab&Biz」が商品化したもの。個の深い悩みや少数派の不便に焦点をあてて満足度を高める、花王「N=1起点のサービス開発」の第2弾となる。
宇宙飛行士が実際に使用した突起型ドライシャンプーシートで、水を使わず、片手で自在にコントロールすることができ、個包装で携帯にも便利な商品。宇宙から家庭、アウトドアでも快適に使用でき、忙しい時の気分転換やお風呂に入りたくない日の洗髪用として提案する。使用方法は、突起のついたシートに指をくぐらせて持ち、軽く頭皮をマッサージするようにして拭くだけで、頭皮や髪についた皮脂などの汚れを取り除くことができる。
洗髪シート向けとして花王が開発したアルコールフリーの洗浄液を不織布製シートに含浸させた。製品のベースとなっているスリーディースペースシャンプーシートは、親水性のある繊維で構成される不織布を賦形性をもつ2枚の不織布で挟んだ3層構造。これを凹凸のある金型でプレスして3D形状の外形トリムを成形することにより、賦形と保液性を両立するシートの開発に成功した。洗浄液はシート全体に含浸させてあるが、とくに繊維間に空隙の多い突起部分にたっぷりと染み込ませてある。不織布は水分を含むと強度が下がることから、不織布製法から繊維の配合率、金型による賦形条件のほか、含浸させる薬液の量まで、ほぼすべての工程について研究を重ね開発した。こうした工夫を施すことで、シートを頭皮に押し当てても突起は潰れず、適量の薬液を頭皮に与えながら皮脂などの汚れをかき取るシートの開発に成功した。