三井化学と旭化成は共同新会社を設立し、両社の不織布事業を今年10月より統合すると発表した。新会社の年産能力は13万2,000tとなり、アジアで第2位の規模となる見込み。アジアでは競合メーカーによる生産能力の新設や増強などが相次いでおり、スパンボンド不織布事業においてますますの競争激化が予想されるなか、収益改善が両社の課題となっていた。両社の事業を統合することで事業基盤の強化と、両社の技術ならびにノウハウを融合させ、シナジーの最大化を図ることで、グローバルで存在感のある不織布メーカーを目指す。
新会社の名称は「エム・エーライフマテリアルズ株式会社」(東京都中央区)で、資本金は5億円。出資比率は三井化学60.62%、旭化成39.38%。売上高は2021年度実績の単純合算で483億円となる。両社が国内およびタイで営む不織布関連製品の製造・開発・販売に関する事業を切り出し、共同新設分割方式で設立する新会社で今年10月2日より事業をスタートする。対象となるのは三井化学のポリオレフィン多分岐繊維“SWP”を除く不織布関連事業と、旭化成のスパンボンド不織布事業およびフィルターシステム事業。生産拠点は、三井化学が愛知県内にもつ名古屋工場内の不織布工場と、100%子会社で三重県四日市市にある「サンフレックス工業」、ならびにタイ・ラヨーンにある「三井ハイジーンマテリアルズ(タイランド)」、旭化成がタイ・チョンブリにもつ「旭化成スパンボンド(タイ)」を引き継ぐ。旭化成の国内拠点である守山工場(滋賀県守山市)内にある年産1万tの工場も新会社に承継するが、システムの移管に時間を要することから、その準備が整い次第統合する。2つの海外拠点は新会社の子会社として生産販売を継続する。
三井化学は同社の長期経営計画「VISION 2030」において、ライフ&ヘルスケアソリューション分野では不織布事業を成長事業の1つと位置づけている。同社は1971年に不織布の製造・販売を開始して以来、川上の原料から一貫で開発、製造できる強みを活かし衛生材料分野や産業材料向けに油吸収材、自動車内装材、土木資材、フィルター向けなど特長的な製品を開発し販売。2001年にはタイに製造販売拠点を設け、積極的に海外展開を進めている。
一方、旭化成は1973年にスパンボンド不織布関連製品の製造・販売を開始して以来、日本国内外で事業を展開。繊維事業の長い歴史のなかで培った技術を生かし、独自性のある商品を開発し、衛生材料分野から産業資材、生活資材分野に至るまでの幅広い用途で多くのユーザーから高い評価を得ている。2012年にはタイに製造・販売拠点を設けるなど海外市場でも積極展開を開始していた。
近年アジアでは競合メーカーによる増強が続いているほか、RCEP発効にともなう関税撤廃の影響を受けて不織布市場は今後ますますの競争激化が想定されている。こうした環境を受けて三井化学と旭化成の両社は競争力を保持し、継続的に事業を拡大していくことを最重要課題としていること、また、環境対応や安定供給といった社会的な要請が高まっていることから、これまで両社共同で事業強化の方策や可能性について議論を重ねていた。その結果、両社の事業を統合することで持続的に成長を見込める事業へ変革することが最善の策であるとの結論に至ったとしている。